『移民クライシス』出井康博

こんにちは、T-Bookです。

今回は前々回で取り上げた「日本に移民は必要なのか?」というテーマの続きです。

NewsPicks の「The Update 」では何人かの専門家を招き、毎回熱い議論を展開しています。

 


今回はジャーナリストの出井康博氏が『移民クライシス』という本で紹介している「日本の移民問題」です。僕はThe Updateでこの本が参照されていたことを知り、購入して実際に読んでみました。

本作品は「週間エコノミスト」2019年5月28日号のBOOK REVIEWでも紹介されています。

本作品の内容は目を疑うほど衝撃的な箇所が多く、作者独自のデータやインタビューから明らかにされる情報と、普段耳にする(美化された)報道には大きな認識の差と闇が存在する事を知りました。そしてそんなとき僕は確かに「20億円稼ぐより、20億人の人々の生活を変えたい」と言い放った牧浦土雅氏を思い浮かべてしまうのです。

 

 


ざっくりではありますが、本作品の内容をまとめてみましたので

興味がある方はご覧ください。

 


背景

1990年代後半〜2000年代前半「留学生10万人計画」(2003年に達成)

2008年 「留学生30万人計画」策定

2014年 経済連携協定EPA)のもと、ベトナムから看護師と介護士の受け入れを開始


福島第一原発事故の影響で留学生全体の約6割を占めていた中国人が減少したことを理由に留学ビザの発給基準を大幅に緩和した。

⇨アジアの貧しい国々から出稼ぎを目的にした偽装留学生の流入が始まる。

 

留学生の数

2012年末 18万919人

2018年6月 32万4245人

ベトナム出身の留学生は2018年6月時点で8万人を超えている。

 

偽装留学生(最も多いのはベトナム人

借金返済のため、人手不足であっても実習生の受け入れが認められない仕事に明け暮れる。

稼いだお金は日本語学校が学費で吸い上げる。

 

日本語学校バブル」

日本学生支援機構(JASSO)のデータを参照

日本語学校に在籍する留学生

2012年      2万4092人

2018年5月 9万79人

 

日本語学校の数

2007年 308校

2018年8月 711校

 

日本語学校は在籍する留学生が失踪し不法残留となることを恐れる。不法在留者の輩出率は留学生全体の5%を超えると入管当局から的成功とみなされ入学者のビザ審査が厳しくなり定員も増やせない。

→失踪の可能性を疑われないように「除籍」し、適正校の資格を維持する。

→失踪を防ぐためにパスポートと在留カードを学生から取り上げる。

法務省は日本に3ヶ月以上滞在する外国人に対し在留カードの常時携帯を義務付けている

朝日がベトナムで巻き起こる留学ブームの火付け役。1990年代始めに始まる。

ある販売店の経営者が「ベトナムの若者にチャンスを与えたい」と考え、ベトナム日本語学校と提携関係を結び、奨学会と話をつけた。当時は販売所で人手不足が進んでいたわけではなく、奨学生は働くよりも勉強することが目的だった。

留学のための経費支弁能力を持たない外国人に対してビザを発給している。

⇨本来であれば、母国から仕送りが望めるか、もしくは奨学金を受け取るなどしてアルバイトなしの生活を送れる外国人に限って発給されるという建前がある。

しかしその原則を守っていては留学生が増えない。

ベトナムのような新興国では賄賂を払えばでっち上げの預金残高(200万円程度)証明書や履歴書を作成することができる。

ビザを審査する法務省入国管理当局、在外公館も「数字の捏造」を理解している。


2019年「特定技能」(最長五年の就労期間)

 

一定の条件を満たした外国人は就労を継続でき、永住者としての道も開かれる。

日本の大学を卒業した留学生の就職条件も緩和される。

日本政府は「移民」を認めない。「移民政策は取らない」

法務省は不法残留の多い国として、中国、ベトナム、ネパール、ミャンマースリランカの5カ国を「問題国」とみなし、2017年から留学ビザ申請時に経費支弁関係書類の提出を義務付けている。その後、バングラデシュ、モンゴルも加えられた。


移民を抱える日本の現状は?

日本で働く外国人

2018年10月時点で146万463人(6年連続過去最高)ー5年前と比べて約2倍の増加

移民と呼ばれる永住者

2018年6月75万9139人ー10年前と比べて27万人近くの増加

 

外国人の不法残留者

2018年1月1日時点で66,4 98人

難民認定の申請をする外国人

2017年には前年比180 %増の19,629人から申請があった。

 

「外国人技能実習制度」

ー「途上国の若者に日本で進んだ技能を身につけてもらい、母国に戻って活かしてもらう」

留学生には「週28時間以内」のアルバイト(出入国管理及び難民認定法入管法)が認められているが、それを上回る就労、日本人との差別待遇を強いられている外国人がいる。

 

「実習生」は近年増加傾向にあり、その数はおよそ29万人。

⇨ブローカーは実習生を斡旋する場合、日本で仲介する監理団体にキックバックを支払う必要が生じる。実習生が失踪した場合に送り出し側は責任が問われるため。

日本語学校も急増し、10年間で2倍以上に増えている。その結果「留学生」の奪い合いが起きている。

⇨ブローカーは留学生1人の斡旋につき10万円程度のキックバックを受け取れる。

全国紙に存在する「奨学生制度」

新聞販売所に住み込んで仕事をしながら、東京など都市圏の大学や専門学校に通うためにつくられた。学費には奨学金が支給され、給与も出る。さらに住居も提供される。

しかし、現在人手不足が深刻化する日本では学生向けの豊富なアルバイトがあるため、新聞配達をやろうとする若者は珍しい。

⇨外国人が配達現場で増えている。

例)日本経済新聞、読売新聞など

就労条件に「嫌です」と答えることで「奨学生から外されてしまう」という不安が意思決定に影響している。販売所や奨学会とトラブルを起こすとベトナムへ強制送還される恐れがある。

夕刊を発行している新聞会社では28時間労働を超えてしまう

朝日奨学会の規定

日本人奨学生には隔週2日で休みがあるが、ベトナム人には週1日しかない

⇨「労働基準法」で差別を正当化する。

残業代の未払い(労働基準法違反)

⇨残業代を支払えば販売所は「週28時間以内」の就労を認めたことになるため

外国人労働者入管法違反に問われるのを避けるため、労働基準監督署に助けを求めることはしない。販売所の経営は軒並み悪化している。

購読者と折り込み広告の減少。


フェイスブックなどのSNSを通じて日本の情報はすでに拡散している。

ブローカーに騙される時代は過ぎ、「週28時間以内」を超える違法就労も含め、日本で待っている状況を承知で入国するようになっている。


販売所、奨学会、日本語学校、企業は外国人を強制送還させられる権利を持っている。

実習生や留学生は下請け会社、零細企業、農家で働くことが多い。

コンビニで働ける留学生はエリート

弁当工場は偽装留学生が1度は経験する登竜門

ベトナムの農家では豊作の時は年20万〜30万の収入がある。

大半の留学生は留学に必要となる費用を借金に頼っている。

内訳(150万円)

日本語学校初年度の学費、寮費6ヶ月分の前払い、渡航費、ブローカーに支払う手数料多くの偽装留学生は親の家や田畑を担保に銀行から借りる。

一族の命運を背負い来日する。

 


みなさんどうでしたか?

僕は強く柔軟に変化を求める今の自分が一体どこに向かおうとしているのか少しずつ分かってきたような気がします。

 

 

 

ではまた次回。