○○へ

○○はとても勉強熱心な印象があります。それはある授業でのことです。○○は1人、僕が選んで持ってきた本を家に持ち帰って、読んでくると言いました。その時、僕は○○の持ち帰った本が、少しでも「興味のある内容」で○○にとって「理解しやすい日本語」であることを願いました。


本を読むことは誰にとっても、はじめは簡単なことではありませんね。自分がリラックスできる場所で本を読めなければ、きっと集中するのが難しいと思いますし、興味が持てる内容でなければ長続きしません。また以前、○○が日本語で書いていたように、「作家の感情へ同感できないから」という理由で本を避ける人もいるかもしれません。確かに僕たちは、僕たちと同じように感じ、気持ちを共有できる瞬間を持ったとき、お互いに親近感を感じます。僕が最近色々な詩の本を読みながら思ったのは、詩に対する印象が大きく3つあることです。1つ目は全く意味が分からないもの。2つ目は意味は分かるけど、共感できないもの。3つ目は意味が分かって共感できるもの。


今回僕が、○○に紹介する「私と小鳥と鈴と」という詩は3つ目の「意味が分かって共感できるもの」です。時間があったら、何度か読んでみてください。○○に読んでもらいたいと心から思える、とても良い詩だと思いました。

 

 

私と小鳥と鈴と金子みすゞ
 
私が両手をひろげても、
お空はちつとも飛べないが、飛べる小鳥は私のやうに、
地面を早くは走れない。
 
私がからだをゆすつても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のやうに
たくさんな唄は知らないよ。
 
鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがつて、みんないい。

 


実は詩を読んでいて、「意味が分かって共感できるもの」を探すのは、難しいことではありません。なぜなら、「共感できる詩」というのは、なんとなく直感的に判断できるからです。僕は詩の本を数冊読みながら、自分が共感できるものには付箋を貼っていきました。少し時間は掛かりましたが、自分が好きな詩と出会えた瞬間は、新しい友達ができたような、そんな気持ちになりました。○○もこれから、たくさんの詩と出会って、あきらめずに意味を理解しようと思えば、きっと「自分が共感できる詩」に出会えるはずです。それはきっとこの先、○○の人生をより豊かなものにしてくれると僕は信じています。


一方、僕が詩を読んでいて、特に難しいと思ったのは、「自分がその詩に共感できない理由」です。意味が分からなければ、共感ができないのは当たり前ですが、「意味が分かって共感できないもの」の理由を説明するのは、とにかく非常に難しいようです。○○にはそんな経験がありませんか?


「作家の感情が同感できない」と感じる理由は、きっと自分の中にあると僕は思います。自分の言葉で表現するのは、僕にとっても、○○にとっても難しい。しかしそれは自分自身をより深く理解することに繋がる、非常に価値があることです。○○には、本での学びを通して、自分自身の理解をより深めてほしいと思っています。充実した留学生活にしましょうね。期待しています。